月末の忙しい時、職場はみんなが仕事を抱え込んでピリピリしていた。いつもは穏やかな隣席の先輩社員も、普段より眼光が鋭くなってイライラしているように見えた。黙々と作業を続ける私に向かって、その先輩職員はこう呟いた。「見てみろよ、課長は暇そうだな」
私は、え?と思った。その先輩社員は明らかに悪意を持って、上司を腐していた。俺達はこんなに忙しいのに、なんで上司が暇そうなんだよ、という意味がこもっていた。
しかし、私は心のなかで(上司は暇そうにしていてもらわなきゃ困るのだけど…)と思った。
■上司は暇そうにしていて欲しい
上司はできるだけ暇そうにしていてほしい。できれば、きれいなデスクの上で爪の手入れをしているくらい暇そうにしていてほしい。
なぜなら、私達が報告・連絡・相談をしたい時に、上司が忙しそうにしていると困るからだ。決裁権が上司にある以上、上司の指示を仰いだり、意向を汲んだ方針で動いていかないと、後々問題となってくる。一度にすべての指示を貰えればいいのだが、そんな仕事はほとんどない。だから、そういう話をしたい時、その都度、こちらが思い立った時に、上司は対応できる状態でいてほしいのである。そうしないと、こちらの仕事が進まないのだ。
産地直送の新鮮なほうれん草をお届けしたいのに、不在で宅急便が届けられないのでは困る。
■上司には上司の仕事があり、部下には部下の仕事がある
私達にそれぞれ割り振られた仕事があるように、上司にも上司の仕事がある。
この場合、上司の仕事は主に「部下に仕事をさせて、チームの仕事を進める(終わらせる)こと」である。それは、役割分担であったり、進捗確認であったり、部下の体調を気遣ったり、細かく上げればきりがないが、結局はマネジメントという一言に集約される。
■役割分担を明確にする上司、しない上司
仕事における役割分担というのは非常に重要だ。上司が任命した瞬間、その仕事には部下にも責任が発生する。私は、この役割分担こそ、上司に与えられた最も重要な仕事のひとつだと思っている。役割分担を曖昧にして、「やっといてー」とチームにそのまま放り込まれても、そのチームは円滑に機能しない。役割分担は細かければ細かいほどいい。進める過程で不具合が生じれば、その時にまた改善すればいいのだから。
■チームが忙しくても、上司は部下の仕事を手伝うべきではない
まとめに入るが、どんなにチームの仕事が忙しくても、できるだけ上司は部下の仕事を手伝うべきではない。実務は部下にやらせるべきである。それは、部下の仕事だから、である。「上司にも手伝って欲しい…」と思っている若手社会人がいたら、「甘えてんじゃねえ」と言ってやりたい。
チームの仕事が終わらないと上司の責任になるのは理解できるが、そこで直接手を差し伸べるべきではないのだ。部下は部下なりに考えて、与えられた仕事を完遂させることに意味がある。
プロ野球でプレイングマネージャーというケースがたまにある。現役選手が監督を兼ねる体制だ。スポーツと会社という違いはあれど、私はあの体制はあまり良くないのではないかと思う。マネージャーとプレーヤーは明確に区分されるべきだし、そこにはしっかりとした仕切りが必要だ。指導を兼ねるなら、マネージャーは教育係のプレーヤーを指名すればいいと思うのだ。
※前ブログ投稿記事からの再ポスト