アメリカや欧州で先行配信されているスマホゲーム『ポケモンGO』が社会現象を巻き起こしています。
今月6日に配信が始まったアメリカでは、配信数日でデイリーユーザー数がスマホゲームの歴代首位を記録。アプリ全体でもGoogle Mapsの利用者数に迫る勢いだそうです。利用時間も米国のLINE的ツール『ワッツアップ』や『インスタグラム』を抜きました。
『ポケモンGO』の驚異的な広がりや社会現象については、色んなところで色んな方が書いているので、私はここでもう少し先の話を書いてみたいと思います。
この『ポケモンGO』がこれからどのような影響を与えるのでしょうか。結論から言うと、私はこのスマホゲームが「日本経済の起爆剤」となりうる可能性を秘めていると感じています。
詳しくは後述しますが、『ポケモンGO』はゲーム単体で考えるべきではなく、そこから波及するあらゆる効果を考えてみたいと思います。
『ポケモンGO』の収益予測は年間3,000億円以上
まずは、『ポケモンGO』に近い部分から洗っていきましょう。
同スマホゲームは課金アプリであり、ユーザーが課金するごとに収益が発生します。米国の調査会社によると、配信4日で約14億円の売上が発生したとのレポートがあり、さらに売上は上昇を続けているとのことです。
そのデータを基に試算すると、アメリカでの売上は少なく見積もって年間1,000億円以上が見込まれます。
それから、イギリスとドイツで配信が始まっている欧州。EU内でのポケモン人気はアメリカに劣るものの、『ポケモンGO』というゲームが持つポテンシャルやEUの人口がアメリカの約2倍であることを考えると、概算でEU全体においても1,000億円以上の売上が見込めるのではないかと考えています。
未だ配信されていない日本では、『ポケモンGO』配信を待ちわびる声が続出しています。
日本で大流行したガンホーの『パズドラ』、ミクシィの『モンスト』が年間売上約1,500億円だったことを考えると、『ポケモンGO』も同レベルでの売上が見込まれると考えています。
そうして考えると、全世界配信が達成されたとき、『ポケモンGO』の収益というのは、年間3,000億円以上は見込まれるのではないか、と予想できます。
売上のうちどれくらいが任天堂の収益となるのか
『ポケモンGO』は任天堂の開発ゲームではありません。米国企業のNiantic,Incが開発運営をしています。
NianticはGoogleからスピンアウトした企業であり、「任天堂」「ポケモン*1」「Google」が主要株主となっていると想定されます*2。
(引用:THE WAlLL STREET JOURNAL)
前述した『ポケモンGO』の売上のうち、一体どれくらいが任天堂の収益になるのか、その比率は当然ながら公開されていません。
ポケモンのキャラクターライセンスを持つ「ポケモン」も主要株主は「任天堂」であり、前述した年間約3,000億円以上のポケモンGO売上のうち、少なくない収益が任天堂にもたらされると考えられます。
国内大手証券会社は、『ポケモンGO』の売上のうち、任天堂の取り分は20%程度であると試算しています。
任天堂の28年3月期の経常利益が287億円であることを考えると、任天堂の業績に与えるインパクトは非常に大きいでしょう。
『ポケモンGO Plus』もあなどれない
さらに、『ポケモンGO Plus』というデバイスが任天堂から発売されることもポケモンGO公式サイトにおいて発表されています。
これは、スマホを見ずに、周囲にいるポケモンの察知や捕獲などの基本動作を行えるデバイスです。
価格は3,780円とのことですが、熱心なユーザーは当然購入行動に走ると思われるので、この売上も任天堂にとっては少なくない収益になるでしょう。
任天堂が配信する今後のスマホゲームへの影響と効果
任天堂が今回の『ポケモンGO』爆発的ヒットで得られる恩恵は、『ポケモンGO』単体では測れません。
今までスマホゲームでは「Miitomo」以外配信してこなかった任天堂ですが、『ポケモンGO』で「スマホゲームとしての任天堂」を確立させつつあり、これからその開発や運営においてのノウハウを蓄積していくことでしょう。
任天堂がとてつもないのは、「スーパーマリオ」「ゼルダの伝説」「星のカービィ」など大人気ゲームの権利をいくつも抱え込んでいることです。これらのタイトルがスマホゲームに参入した場合、おそらく大変な人気を博することが予想されます。
すでに「どうぶつの森」「ファイアーエムブレム」は今秋にスマホゲームとして配信することを発表しており、「スマホゲームの任天堂」はこれから躍進していくことでしょう。
連想される関連銘柄の株価も高騰
『ポケモンGO』のヒットによって株式市場は「ポケモノミクス相場」が巻き起こっています。以下の企業が関連銘柄として、株価が急騰しています。
- 京都銀行(8369) 任天堂のメインバンク
- サノヤスHD(7022) 「ポケモンEXPOジム」を昨年開業
- 第一屋製パン(2215) 「ポケモンパン」を販売
- モバイルファクトリー(3912) 『ポケモンGO』と同じ位置情報ゲームを開発
- イマジカ・ロボットHD(6879) ポケモンアニメ制作子会社を保有
- フジ・メディアHD(4676) 米Nianticに出資
- タカラ・トミー(7867) 子供向けアーケードゲーム「ポケモンガオーレ」を販売
- ディー・エヌ・エー(2432) 任天堂と提携してスマホゲームを開発
また、『ポケモンGO』はGPSを活用しスマホの電源消耗が激しくなることから、モバイルバッテリーの販売企業も熱気を帯びているそうです。
「人が外に出て、いろいろなところへ移動する」
前置きが大分長くなりました。ここからが、私の本当に言いたいことです。
『ポケモンGO』によってもたらされる最も大きな効果は何か。それは、「人が外に出て、いろいろなところへ移動する」ということです。
このゲームは、ある特定の場所をゲームを起動させてカメラに映し出すと、ARでポケモンが画面に出てくる、というゲームです。ポケモンを捕獲するには、いろんな場所に行かなければなりません。
すでに報道されているとおり、大人気のアメリカではスマホを持った人たちが公園や街中に溢れているそうです。
ここから連想される経済活動はいろいろ考えられます。
まずは、『ポケモンGO』が飲食店などとコラボレーションするとによって、そのお店での消費行動が促進されます。「そのお店でしか手に入らないポケモン」などプレミア感をつけることで、熱心なユーザーは店舗に出向くことでしょう。
すでに、マクドナルドとのコラボレーションが噂されており、全国のマクドナルドがポケストップ*3になるのでは?と予測されています。
日本でPokemon GOが遅れている理由は、マクドナルドとの提携?|ギズモード・ジャパン
さらに、特定の地域でしか手に入らないポケモンを設定することで、その地域への人の流入が見込まれます。
例えば、札幌の時計台にしか生息しないポケモン、箱根の湯畑にしか生息しないポケモン、岡山の後楽園にしか生息しないポケモン、大分の別府温泉にしか生息しないポケモン。このようなポケモンを捕まえるために、離れた地域のユーザーが捕獲を兼ねた旅行をすることで、付随する消費行動が見込まれます。
遠くの地域へ行くには、当然交通費もかかりますし、その地域での食事、観光などもするかもしれません。
前述した飲食店などと同じように、各地の自治体がポケモンとコラボして、ポケモントレーナーを呼び寄せる町おこしが考えられます。
アベノミクスの欠点だった「個人消費」が促進される
この『ポケモンGO』によるユーザーの消費行動が、日本経済にとって非常に強い影響をもたらすのではないか、と個人的に想定しています。
アベノミクスの最大の弱点は「個人消費」です。要するに、会社じゃなくて個人個人がプライベートでお金を使ってくれない、ということです。
アベノミクスを批判する際の常套句は「株価は上がったけれど、私たちの生活はちっとも良くなっていない」というものでした。可処分所得は増えないし、景気上昇の実感がなく、消費行動につながらなかった。
そして、消費税の増税がありました。これで、伸びを見せつつあった個人消費は一気に落ち込みました。
私は、個人が決して使うお金を持っていないとは思いません。というよりも、先の見えない不安定な情勢の中で、お金を使う気になれない、というマインドが蔓延しているように思います。
GDPの6割を占める個人消費がガクッと落ち込んだことで、GDP自体の成長も止まりました。だから、「アベノミクスは失敗だった」と言われたわけです。
しかし、『ポケモンGO』はこの「個人消費」を促進するのではないか、と考えています。大量のポケモンGOユーザーがプライベートで旅行や飲食、購買などをすることで、世の中にお金が回りだし、個人消費の上積みが期待されます。
日本経済の起爆剤となりうるか?
まだまだ確定情報が少ない中での記事になり、予測や想定が多くなってしまいましたが、私がこの記事でもっとも伝えたいことは、タイトル通り『ポケモンGO』が日本経済の起爆剤になりうるのではないか、ということです。
ひとつのゲームで日本経済にどれだけ影響があるのだ、と笑われるかもしれませんが、私は真剣にそれくらいの希望を持っています。
これほどまでに人々を熱狂させるゲームはなかなかありませんし、ゲームとリアルがつながる仕様も、経済面からみればあまりに魅力的です。
日本での配信時期は未定ですが、配信が待ち遠しくてたまりません。日本でどのような反応が見られるのか、ワクワクしています。
『ポケモンGO』からもたらされる経済効果を、しっかりと見守って見極めていきたいと思います。
関連サイト・記事
- 『Pokémon GO』公式サイト
- 「ポケモンGO」公開4日で売上14億円突破、米調査会社データ | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)
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※本記事は個人の予想や予測、主観によって書かれた記事です。特定の銘柄への投資行動をあっせんするものではありません。投資判断は自己責任にてお願いします。